御柱見聞録 /

御柱祭「ア・ラ・モード」 −ハッピのるつぼ−

 氏(曳)子が羽織るハッピの種類の多さに驚きました。カラフルと言うより、雑多と表現した方が正確でしょうか。

御柱法被の競演 特に上社の御柱祭で顕著ですが、旧来の青を基調とした市町村別の統一ハッピは少なくなり、各区で選定したハッピが幅をきかせています。この傾向は「色といいデザインといい余りにもダサい統一ハッピに反発して」とも取れますが、金額にして約3倍・それに次回まで6年間タンスの肥やしにするというマイナス面があっても、今や大人気です。
 ハッピは制服と同じで、一番身近な「区」の団結心を生むという効果があります。初対面でも、ハッピが同じということで同じ地区と分かり話が弾むことがあります。都会同様年々薄くなる区民のまとまりを「七年に一度よみがえらす隠れたアイテム」というのは誉め過ぎでしょうが、迷子になっても一目で自分の区と分かる利点があります。

 ところが、この「区の統一ハッピ」だけでは収まらなくなってきました。多くの地区で、さらに御柱曳行の分担係毎に、統一ハッピとは別に(一式30万円の話も聞く)独自のハッピを作り、さらに自己主張したい個人があつらえたハッピが加わり、まさに百花繚乱の状態です。見た目は華やかですが、まるでハッピの坩堝のようで、これが全体としてのまとまりを欠いているようにも思えます。昔から曳行装束には決まりがなかったそうですから、これも伝統と言えましょうか。

 本宮二を担当した「湖南」と「中洲」は全員が山吹色のシャツで、柱を取り巻く光景は壮観でした。もちろんハッピは各区で違いますが、行動時にはハッピを着ませんから「黄色一色」になります。話によると、強いリーダーシップを持つ人が現れ、身につけるものや(安全のために)曳行に関わる作業手順などを厳格に決めたそうです。そのため、何をするにもそろっているので一体感がありました。

 その点「まとまりがない」という評価が一般的な原村・泉野地区は「曳行時間を守らない常習柱」とも言われ、(見る人が見ると)何をするにもチグハグに見えるそうです。「原村と茅野市の混合所帯」では無理もありませんが、“当事者も暗黙で認めている”ようなので改める気配がありません。

 見物人の中に紛れ込むと、巷の評価が耳に入ってきます。「(リーダーを差し置いて口を出す)船頭が多すぎて、時間が掛かり動きもスマートさがない」とケナされる一方で、「統一のないこのバラバラ感が面白い。お祭りはこれでなくちゃ」と弁護とも取れる声も聞かれました。こうなると、後者の話につい乗ってしまう私は、評価がぐらついてしまいました。

 オリンピックの入場行進が変わったように、北の国の一糸乱れぬ動きが評価されない時代です。十人十色を受け継ぐ伝統もあるのが、「これぞ、御柱」ということでしょうか。…申し訳ありません。いつの間にか、ハッピから「気質」にすり替わっていました。