御柱見聞録 /

上社の木落とし(前二の御柱)

 原村「サラダチャンネル」で放映された、平成16年の前宮二之御柱の木落としです。バランスよく下(落ち)るのが美しいとされていますが、見物客は“醜態”の方に拍手喝采を送ります。区の記録係として苦労して編集した御柱ビデオをよそに、予想通りこの横転のシーンがバカウケでした。


「サラダチャンネル」承認済

 聞くところによると、横転の原因は(何かの手違いで)予定時間より早く落ちてしまったことにあったそうです。メドテコに乗る者・左右に張った命綱でメドテコのバランスをとる者の双方が、まだ“心身”とも準備ができていない中での「動き」だったので、不意を食らったということでしょう。

 その後の映像では、横転した反動で後メドがゆるみ、前メド(御柱)が動いていないのに後メドが揺れているのがわかります。通常は、ガタができると抜け易くなるので修理・調整をします。しかし、木落とし直後のJRのガード通過でメドテコを外すことがわかっているので、そのままにしたのでしょう。または、横転の上に修理では「かっこわるい」ので「行け行けドンドン」にしたとも考えられます。

木落とし(御柱の落とし方)

 御柱の後部には「追い掛け綱」があって、その末端は、引っ張っても動かないように杭に巻き付けて固定されています。そのため、相撲の仕切り直しと同じで、坂下の氏子が何回も御柱を「曳きずり落とそう」としますが、落ちる“フリ”だけで終わります。
 赤旗が出ている限り落とすことはありませんから、交代で柱の先端に乗って木落としの疑似体験を楽しみます。「制限時間」が一杯になり「正規の乗組員」が所定の位置につくと、初めて白旗が出ます。この時点でいつ落ちてもいいように気を引き締めます。

 氏子が綱を曳く力には波があります。その張力が揃って最大になったときに、間、髪を入れずに斧で追い掛け綱を切ると、勢いよく御柱は落下します。これが「下社の木落とし」です。
 「上社の木落とし」はメドテコに人が乗っていますから、勢いがありすぎると、後部のメドテコが大きく跳ね上げられて危険です。そのため、追い掛け綱は切らずに緩めるだけです。また、バランスを保ったままゆっくり下るような傾斜なので、“予想外”を望んでも「豪快・豪壮」を期待してはいけません。

 木落としや川越しのメドは、通常の曳行時と異なり大勢が乗る大型のものを使います。最大の見せ場なので、氏名も公表される「完全指定席」です。前メド最上部が序列ではトップの場所になりますから、水面下ではその座を巡って競争が起こります。慣例で、その年・その場所で元綱を担当する地区が独占しますから、人口が多い区ほど熾烈な争いになります。度胸だけではダメで、早くから名前と顔と貢献度を売って認められる努力が必要と言われています。

平成22年の木落とし


「サラダチャンネル」承認済み

 今回は木落とし坂が改修されました。平均傾斜は26度と変わらないものの、坂の長さは17mから32mと長くなりました。
 その坂は赤土なので、前日の雨で滑り易くなっています。命綱の操作も踏ん張りが効かないことが予想されますが、それより、“試技”ができないので落ち方の予想がつきません。何か起きそうな条件が揃っているので“期待”しましたが、本一は優美に下り「トップを飾る」を示しました。
 その後は横転が相次ぎましたが、私が所属する「前二」は“残念ながら”優等生を演じ、前回のような「語り草となるようなパフォーマンス」を見せてくれませんでした。