御柱見聞録 /

めじるし(目印)と旗持ち

 御柱が“いるところ”には、「めじるし」と呼ばれる大小様々な旗が翻っています。大きな旗は、わかりやすく例えると「大字(おおあざ)」、小さなものは市町村の「行政区(住民自治組織)」の名が染め抜かれています。
 行政区の名前と地域は江戸時代から明治時代への旧村を引き継いでいるので、旗の文字に「村」を付ければ、そのまま江戸時代の村に(名前だけ)“タイムスリップ”できます。諏訪大社のお膝元を例に取ると、それぞれ「中洲」と「神宮寺(村)」になります。一方の「ひらがな」や「カタカナ」は新しく設立した区で、原村では「ペンション(区)」があります。
 自己主張の固まりのような「旗印」ですが、一番身近な利用法は、「迷子になったら区旗を探せ」でしょうか。因みに、原村では、太い竹竿の「村旗」とアルミポールの「区旗」があります。

「めじるし」の川越し 「めじるし」を掲げる役を「旗持ち」と呼びます。通常は、オリンピックなどの入場行進にも見られる地区を象徴する「重要な役目」ですが、御柱を曳くことができないので人気がありません。通常は、その年の常会(隣組)などの役員に押しつけられます。
 御柱を曳行する際は、原村では先頭に村旗が掲げられ、その後に各区旗が続きます。御柱の動きと連動する曳子と違い、フリーの旗持は前しか見ませんから、曳子との間が長く空くことがよくあります。そのため、待ち時間の暇つぶしに、見学者を強引に太い村旗の竹竿に登らせます。
 子供は身軽なのでスイスイ登りますが、感嘆の声は挙がっても“面白み”がありません。好んでターゲットにされるのは「若い女性」です。悪戦苦闘する姿を見かねて(待ちかねて)“手助け”するのは、どさくさに紛れての“準公然ワイセツ”とも言えますが、これも役得でしょうか。
 また、「村・区」という身分証明書を掲げていますから、黙って通るだけでも、敬意を表した沿道の接待所から声が掛かり、積極的に酒肴が提供されます。

緊張する「めじるし」の川越し 平成16年4月

「めじるし」の川越し 「川越し」では、まず先頭に立って最大の「めじるし(目印)」である「村旗」が渡ります。その後に御柱の曳綱と、それを守る各区の旗が続きます。
 めじるしの川越しは、老齢が多い役員に代わって、体力に勝る「若者会」などの若手が臨時に担当します。「若者会」と言っても実質には年齢層が広いので、自己の意志に関係なく若い順に川入りを押しつけられます。中には、イヤだと言いながらうれしそうに大(冷)役を務める者もいますが…。
 雪解けで増水した流れと見えない川底、さらに「人は流されても旗は流すな」という“鉄則”がありますから気は抜けません。ハプニングを期待する衆人環視の中で、足先で石の突起を探りながら、旗を上下に揺すってその存在を示さなければなりません。チームワークも必要なので、見かけ以上に体力と技術が要求されます。

 ある区では人・旗とも流されて、区旗が一時行方不明となったと伝えられました。区にとっては大変な不祥事となりますが、一般の氏子は又聞きした話にさらに創作した尾ひれを付けて、格好の話題として提供してくれました。