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山神宮の「お腰掛」 山梨県甲斐市菖蒲澤 '20.10.31

 『韮崎市誌』に、「お腰掛(こしがけ)」についての一文があります。

 市内においても「山神社・神明神社・大六天社」などは「お腰掛」と称して木の枠組だけであり、
韮崎市誌編纂専門委員会編『韮崎市誌』〔神社〕から抜粋
神明神社のお腰掛
韮崎市「神明神社のお腰掛」

 その木枠は他に見られないもので、韮崎市でも「穂坂」周辺のものと思っていました。しかし、ここは閉ざされた集落ではありません。そこを縦貫する穂坂路(ほさかみち)は甲斐と信濃を結ぶ街道の一つなので、少なくとも、今で言う「北の北杜市と南の甲斐市」には存在すると睨んでいました。

 Googleマップに表示する神社を、穂坂から周辺部に広げながら調べる中で、甲斐市の八幡宮にその写真があるのを見つけました。投稿者は珍しいものとして載せたと思いますが、私は「これは、お腰掛」と直感しました。

山神宮参拝 '20.10.28

八幡宮のお腰掛
お腰掛space立木の奥が八幡宮

 鳥居を追い求めたばかりに通り過ぎ、菖蒲澤林道にかなり深入りしてから戻るはめになりました。見逃した要因は他にもありますが、その第一は、鳥居の代わりとなる注連柱(しめばしら)です。その前に立てば納得できますが、立ち枯れた木にも似て、まったく気がつきませんでした。

八幡宮のお腰掛 最近伐られた大きな切株に接して、それはありました。正しくお腰掛でした。
 皮を剥いだ丸太の素木を組み合わせてあるので、現地で作ったと想像してみました。


八幡宮のお腰掛 中央に幣帛が立っているので、その奥の石が御神体と思われます。
 本来は、この方形の区画がそれなので必要ないと思いますが、何もないのも淋しいということで置い(てしまっ)たのでしょう。
 その石の周囲を観察しますが、何も彫られていません。自然石を据えたとしましたが、この写真を撮るために近接すると、何か黒い模様が確認できます。墨書が消えかかったようなその線を眼でなぞると、「山神」と読めます。その下が判読できませんが、当てはまるのは「宮」しかありません。
 通しで読んで「山神宮」となり、この神社が山ノ神と確定しました。諏訪では「山之神・山ノ神」が普通ですが、右に並ぶのが「八幡宮」なので、この辺りは「宮」を用いていると考えました。

(隣の)八幡宮

 横並びの神社ですが、参道は別です。

八幡宮
↑八幡宮

八幡宮 社号標は「郷社 八幡宮」です。しかし、中央の石祠が本殿ですから、山中という立地からも、「なぜこれが郷社、なぜここに八幡様」と考えてしまいます。
 社号標の裏一面に文字が彫り付けてあります。この疑問が解消できると注視しますが、彫りが浅い上に逆光とあって読めません。お腰掛が目的だったのでカメラに収め、甲斐市では初見となったお腰掛を後にしました。