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大星神社と三峯社 茅野市湖東 23.9.24

 カーナビ(車)も4年目ともなると、橋のない川を渡るなど情報の古さが気になります。しかし、更新には◯万という経費が掛かるので二の足を踏んでいます。
 大星神社がどこにあるのかわからないので、事前に検索して、ネット地図の信号「山寺上」を始点とする道をノートに書き写しました。この経路を伝って大星神社をセットするつもりでしたが、その場所を拡大しても神社は表示しません。後はナビとノートの道を突き合わせるしかありませんが、小道を間引いて概念図のようになったボールペンの道では、なかなか一致しません。ナビに新設の信号「山寺上」がなかったことが一番の原因ですが、使命を忠実に果たしたナビからは「目的地周辺です」と見放されてしまいました。

大星神社

大星神社 四方はすべて田圃という砂利道など、どこをどう走ったのかわからぬまま、文字通りの「紆余曲折」を経て大星神社の前に車を横付けにすることができました。参道入口の前には、大小の石祠や旧村のあちこちから集められた神仏を問わない石造物が並んでいます。一之鳥居の鳥居額に「大星神社」を確認してから、木造の二から三之鳥居をくぐって一段上の境内に立ちました。

大星神社境内

 「大星」から北斗七星を祀っていると期待していましたが、それに繋がるものが見つかりません。拝殿の大棟に「諏訪梶」の神紋が見られるので、諏訪明神の支配地では、建御名方命が“無難”ということでしょうか。拝殿に連結した覆屋内の本殿も、格子窓のガラス越しとあって、彫刻などの詳細は見えません。本殿がダメなら他に何か手掛かりが、と境内をくまなく巡りましたが、それ以上のことを見つけることはできませんでした。「星」は名のみのようです。

大星神社「日参札」 左右に御柱を控えさせた拝殿の梁に、将棋の駒の形をした「大星神社日参札」が二枚掛かっていました。かつては当番制で日参を欠かさなかったのでしょうが、墨の薄さと手が届かない場所から、現在は「そんな事が行われていた」ことがわかるだけです。


謎の木祠

三峯社のお仮屋 大星神社の境内社にしては“雰囲気”が違う、と写真の祠前に立ちました。気になったらあくまで追求するのがこのサイトです。その流れで、「少々特異な造り」というだけで「三峯社ではないか」と考えました。「三峯社なら中にお札があるはず」と確認したいところですが、賽銭箱は無くてもその姿を地元の人には見られたくありません。“付かず離れず”という位置で、ズームアップしたカメラで覗くと「三峯…」が見えたので、そのままシャーッターを押しました。

 結果として、詳細がわからない大星神社よりこの祠の紹介がメインとなってしまったので、大きさを提示するのが“義務”と考えました。ところが、今となっては腰の高さとも首の高さとも定かではありません。カーナビには大星神社の位置をメモリー登録しましたが、改めて調べに行く気にはなりません。とりあえず「全高1.2m(4尺)」としました。
 「用事を済ました帰り道・星の名前に釣られた」という参拝なので、予備知識がありません。「大星神社に来た」のは事実ですが何か消化不良のようにスッキリしないまま、今度は「自宅に戻る」をセットしました。

三峯神社祈祷之神璽

三峯神社祈祷之神璽 自宅で確認すると、下の御札には「茅野市湖東中村拾七戸」と書かれています。上は「中村・講社御中」とありますが、「三峯神社」以下が読めません。拡大したら「祈祷之神璽(しんじ)」と判読できました。
 紙色の白さからも、中村の17戸が講中として健在であることがわかります。毎年当番が代参で行くのか、全員で親睦を兼ねてお参りに行くのかはわかりません。宅配という「手」もありますが、講外者があれこれ詮索することではありません。
 本来は萱(カヤ)で仮屋を作ってお札を納めますが、それも大変だということで恒久的な社殿を作ったのでしょう。もしかしたら、この祠を造るまでは毎年お仮屋を作っていたのかもしれません。自治体の『誌・史』を開くと必ず「講」の解説が載っていますが、現在の様子を何らかの事物で確認できるのは「三峯講」だけでしょうか。お札にある「火防盗賊除」から、諏訪大社より専門社「三峯神社」を「良し」としたのでしょう。
 ネットで茅野市の大星神社を検索すると、「御柱祭」ではヒットしますが由緒などはわかりません。三峯社を確認できただけでも収穫があったとしました。

大星神社資料集

 ネットで「大星神社の由緒」探しをする中で、“星の神社”を研究している人が多いことに気がつきました。参考になるかは別として、図書館で「茅野市の大星神社」関連の本を探してみました。
 茅野市『茅野市史』から「湖東地区の産土社」を転載しました。

 中村の産土社は大星神社で祭神は北斗星、一説に建御名方命。『祝詞段』には「大法師」とみえるが、慶応四年(1868)に出された神仏判然令(分離令)の後、明治三年に仏教に関する名称の大法師を大星に変えたという。祭日は七月二十三日。

 『市史』ではズバリ「北斗星」としていますが、これは明治9年の調査報告書である『長野県町村誌』が原典と思われます。『町村誌』は正確ではないとの“噂”がもっぱらなので、そのまま鵜呑みすることはできないかもしれません。
 湖東公民館『湖東村史』から「佛教の弘通と湖東地方」の一部を転載しました。冒頭に、諏訪教育会『復刻諏訪史料叢書』から「諸社勧請段」の関係する部分を引用して考察しています。「妙見や北斗星」の文字に吸い寄せられる人以外は“面白くない”ので、スルーも可です。私も、何回も「大幅な中略」でごまかそうとしました。それでも、「昭和36年発行・非売品」という低コストによる当時の紙事情でしょうか、異臭が漂うセピア色のガリ版刷り『村史』は稀少本と見て、頑張って(できるだけ)写しました。

 (前略)
御社山ノマイキ(詣来)ノ原ノハツウ花(初尾花)
ハツウ花、イカ(如何)ニホ(干)ストモイロ(色)ヤマサ(優)ルラン
山宮大法師(大星)・小法師(小星)ソウソウノオンホ秋ヨ(闢廬)ミサクタ(御作田)ヤタテ(矢立)ヤナ川(柳川)ノ大明神マテ(迄)神々ノアソヒ(遊び)スルマ(間)ニヨカフケル(夜が更ける)
モ々ムキヨ(五字意味不明)ツトメ(早朝)テコソワアソ(遊)ヒスルマテ
山宮コクソウ(虚空蔵)イカ(如何)ニウレ(嬉)シトオホ(思)スラン
オホスランヨ、ユキ(二字意味不明)タタ今(只今)ノ花キヨ(清)メヨ
注連ノ内、オモ(重)サノ鈴フ(振)リナ(鳴)ラシ
フリナラシ、丹波ノ御神楽マイ(参)ラスル

文中の(◯◯)は、『村史』では振り仮名です。
 これにより山宮崇拝の対象は、虚空蔵と共に大星小星であることがわかるのである。然し虚空蔵と大星小星は全く別の信仰ではない。虚空蔵信仰から大星小星の崇拝が派生したのであり、又外に御射山は三光の信仰を生んでいるが、それは七月廿七日の御射山祭には、三光則ち日月星を、日中同時に拝むことができると云う信仰である。これも虚空蔵の信仰から派生したものであり、之等は皆信仰の分化で、その本源は虚空蔵菩薩の崇拝にあるのである。
 我が国太古の星の信仰は、古事記に見ゆる天津甕星(あまつみかほし)以外にはなかったが、その後大陸から暦道天文道が移入され、その為妙見・棚機・天白星・明星・廿八宿等星関係の多くの信仰が生まれた。これは我が国固有の文化が、外来文化の影響を受け、複雑豊富になった結果である。大星小星の信仰は天空全体の星の信仰であるが、この信仰は全国的なものだったと見え、各地に大星神社が存在するのである。近くは上田市に大星神社があり、(上田の大星神社は省略しました)
 大塩中村の大星神社は、根元記や祝詞段に「中村ニ大法師小法師、氏神明神」と見ゆる古社であり、大法師小法師は全くの宛字であるが、仏教化の影響を受けて、斯る文字が用いられたのである。一体我が国太古の村落の小神は総て人々の生産に密着した狩猟神(山の神)か農耕神(田の神)であった。中村の大星神社も太古は神氏族の小氏の祀った山の神か田の神であったことは疑いなきものである。而して社会文化の進歩複雑化に伴い遂に天体信仰の神社と変わったのであった。
 乍然斯様に祭神の変革したのは、単に中村の大星神社ばかりではなく殆どの村落の神は、平安朝より中世にかけてその祭神が変わっており、それが如何なる神に変わって行ったかは、根元記や祝詞段を御覧になるとよく判るが、実に色々な神に変わっている。是は文化の高度化に随い、古代の原始的な狩猟神や農業神の崇拝のみでは、人々が満足出来なかった訳であり、則ちより高きも望む人間の要求が、新しい神を生んだのである。なお中村大星神社の信仰は、御射山山宮の信仰を移したものと考えられる。

以下は、同書の別項「御頭とおぶすな様」です。

(前略) 古村中村には、大法師小法師の二社が古くからあった。このうち大明神(諏訪明神)をまつる大法師社(現大星神社)が氏神で、やがて新しく生まれた山口・上菅沢と共に三ヶ村がおぶすな様として大法師社を祀っている。

 諏訪史談会『諏訪史蹟要項・茅野市湖東篇』の「社寺」から[中村]を転載しました。出典が『湖東村史』らしく、多くの内容が重複しています。それ以外の文を以下に載せました。

 昔は上社神主(こうぬし)によって祭事が行われていたといい、盛大な燈籠の火祭りもあった。明治の初め神仏分離の時、仏名を改めて大星と書き替えたともいわれる。

 諏訪史談会『諏訪藩主手元絵図』の「中村」では「大法師宮」と書いてあるので、中世から江戸時代までは「法師」の名称だったことがわかります。また、『村史』では「北斗星を祀る小法師社」の存在が窺われますが、現在ではどうでしょうか。