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達屋酢蔵神社・達屋酢蔵大明神 茅野市横内 16.12.15

 ここ20年間、横内の交差点近くに周囲より抜きん出た大木が数本見え、神社の杜らしいとは思っていました。地図で確認すると、それが奇妙な名前の達屋酢蔵(たつや・すくら)神社でした。

達屋酢蔵神社

 達屋社と酢蔵社が合併して、長野県神社庁の表記も「達屋酢蔵神社」です。

達屋酢蔵神社
26.11.22

 木造の由緒書がありますが、下部が風雨や紫外線で文字が退色しているため、圧倒的に木目が目立っています。そのため、この境内では最も古そうなモノに見えるほどでした。文字もかすれというより断片化し、祭神の名前もわかりません。この神社に全く知識のない私は、「達屋酢蔵」という読み取れない文字列から、この神社の訳ありな由緒を想像してしまいました。

現在は、評議委員会が設置した詳しい案内板があります。

 境内には、アルミ板に印刷された茅野市指定天然記念物「達屋酢蔵神社境内社叢」の案内板があります。「神社の由緒書きが読めないから、代わって」というわけではなさそうですが、「社叢」の説明文の5分の2を費やして「…当社は、達屋(立つ屋または盾屋)社・酢蔵社の両社を合祀したもの、…当社の御柱は、八ヶ岳御小屋神林より曳き出す特権を有する…」と解説していました。

達屋酢蔵神社 拝殿・本殿を横から見る位置に、諏訪では「注連掛(しめかけ)鳥居」と呼ぶ鳥居がありました。諏訪大社本宮や御射山社にもある、鳥居でもなく注連柱(しめばしら)でもない、冠木(かぶき)門に注連縄を掛けたような鳥居です。

達屋酢蔵神社 拝殿前に戻ると、「境内の地下には豊富な水脈があり、茅野市の上水道に供給している」という水資源開発の碑があります。
 その湧水の一部を利用したのが、左写真にある石橋の下にある池とわかりました。水温はかなり低そうですが、大きなコイは悠々と泳いでいました。

ケヤキと御柱 葉を落として露わになった奇怪なケヤキを撮ってみました。手前に写っている「これは素性がいい」という木が、諏訪大社社有林がある御小屋山から「特権」で曳き出された御柱です。諏訪大社とどのような結びつきがあるのでしょうか。何か、達屋・酢蔵神社は奥が深そうです。

水神・伍竜女宮大明神

 旧村では隣に当たる中河原に「姫宮社」があります。案内板には、「…祭神伍竜女宮大明神は横内村に祀られていたが、その後宝暦九年に中河原村に遷座されて村の水神産土神として祀られ…」とあります。「その横内村が茅野市横内で、かつて伍竜女宮大明神が祀られていたのが達屋酢蔵神社」とは逆案内になりますが、「水神と伍竜女宮大明神」が「湧水と達屋酢蔵神社」に対応できそうです。

達屋酢蔵神社と郡衙

 茅野市『茅野市史中巻』から〔達屋・酢蔵神社〕の一部を転載しました。
 達屋・酢蔵神社は旧横内村の平坦地の中央に位置し、社前を諏訪大社上社参道が通じている。達屋社は祭神大己貴神・手置帆負神、「上社末社三十九神」の内「下十三所」の一つ。酢蔵社は祭神思兼神で同じく「中十三所」の一つである。達屋は立屋・盾屋・立矢・盾矢、酢蔵は酒倉・酒蔵の字を用いられたことがある。(中略)
 また、『諏訪神社祭典古式』には、三月丑の日の神事の項に、「此の日、国司栗林郷立屋社ニ着ク」との記載がみえるが真偽のほどはわからない。この神社は古来、諏訪神社の御柱山である八ヶ岳御小屋山より、御柱の曳き出しができる特権を持つ唯一の末社といわれ、寅申の年の御柱曳き建てには御小屋山より曳き出しを行ってきている。酢蔵社は、他所にあったものが後に立屋社に合祀されたといわれ、現在も社殿は一つであるが、二つの扉をもっている。

 「国司が達屋社に着く」から、「達屋酢蔵神社と郡衙は密接な関係があるのではないか」という説があります。次は、諏訪教育会『復刻諏訪史料叢書』収録の『守矢家諸記録類』から「嘉禎四年神事次第」と付箋がある『神事次第(断簡)』です。

丑日前宮神事 (前略) 同日国司使栗林郷立屋社着
中寅日御祭以下三ヶ度、同日国司使大宮にて官幣捧る、

 『茅野市史』が「真偽のほどはわからない」として挙げた「此の日…」は、(明治期に書かれた)『諏訪神社祭典古式』が『神事次第』を引用したものです。茅野市が編纂したものなので、『神事次第』の方を挙げて欲しかったのですが…。

 「国司の宿泊施設に達屋酢蔵神社が造られた」または「達屋酢蔵神社の社地に宿泊施設が造られた」と考えられ、これが「特権」を持つ理由の一つではないかということだそうです。また、茅野駅前で顕著に見られる八ヶ岳台地の断層下からの豊富な湧水も、この地に諏訪明神以前の一大勢力があったことを示すもので、「蟹河原(がにがわら)の長者」と「達屋酢蔵神社」の関連も見逃せないという話もあります。

横内区の「区有林」

達屋酢蔵神社 平成19年の5月末に御小屋山に登りました。要所には、毎年行われる境改めの標柱が何本も立っています。その中に「横内評議員会」の文字や「達屋酢蔵神社印」の焼印を見つけました。
 諏訪大社社有林との境を「物と字」で見て、「達屋酢蔵神社は、御柱を御小屋神林より曳き出す特権を有する」ことを思い出しました。諏訪大社社有林の1/3はあるという区有林です。どのような過程で特権を持ち得たのか、まだ明快な説はありません。


‖サイト内リンク‖ 達屋酢蔵神社の湧水「蟹河原の長者」