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御作田御狩神事 6月27日

 『諏方大明神画詞』では、「事しげ(繁)ければこれを略す」とあるように、「五月会に同じ」と簡単に書いています。

 廿七日月の大小により延役あり、御作田の狩押立秋尾沢狩集(かりつどえ)山上の狩倉をおす、廿九日に至るまで三ヶ日の儀五月会に同じ
諏訪教育会『復刻諏訪史料叢書 第一巻』

 ここに「秋尾沢」とあるので、原村の闢廬(あきほ)社の辺りで狩を行ったことがわかります。神事の解説は、武井正弘著『年内神事次第旧記』の「注釈」を引用しました。

 この催しは別名を御作田狩押立とも言い、年四度の御狩にあたるが、特徴としては弓矢や放鷹による個々の狩りは許されても、大がかりな狩立はなく、象徴的な贄狩りの式だったことで、神贄としての鳥獣は大祝直属の神人たちによって調えられる習わしであった。 (抜粋)

 現在の御田植神事は、6月の初めに行われます。古くは旧暦の6月晦日に御作田(社)で、後には藤島社の斉田で行われました。その神前に供えられるのが、御作田御狩で調達した「贄」ということになります。言い換えると、「年四回の農耕儀礼に使う贄の鳥獣を捕るのが、年四回の御狩り神事」と言うことになります。前出の『年内神事次第旧記』には「御田(御作田)へ櫃飯一・瓶子一貢・御贄参」とありますから、鹿肉などが供えられたのは間違いありません。

平成の御作田御狩神事

御作田御狩神事

 平成21年の同日に拝所から覗くと、朝方降った雨が石畳をまだ濡らしています。光が乏しい斉庭ですが、左には、真新しさ故に日を受けて照り返しているような西宝殿・前方は幣拝殿裏の神居から伸びた緑も一段と鮮やかな木々。右方の脇片拝殿には、笙を暖めている神職が人(神事)待ち顔でした。

 この日は前宮の月次祭と重なるので、前宮に参向した宮司を始めとする神職は取って返しての神事となります。今日は遅れ気味と見ましたが、定刻の11時には、神職は定位置に座っていました。
 御狩神事は諏訪大社の内輪の神事なので、前宮で見た諏訪大社大総代の姿はありません。また、現在は神前のみの神事ですから、修祓から始まり宮司一拝で終わる簡素な内容でした。
 その後、新しい西宝殿と摂末社遙拝所を拝礼し、今日の神事はすべて終わりました。

 宮司が奏上する「祭詞」が聞こえれば、現在の御狩神事を諏訪大社がどのように取らえているのかわかります。しかし、控えめとはいえ途切れることのないセミの声に埋没し、断続的に響き渡る賽銭の乾いた音が重なって、ここまでは伝わってきません。もっとも、聞こえたとしても文字を見なければ理解はできませんが…。