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麻衣廼神社の神紋「違い丁子」 塩尻市贄川 26.6.27

違い丁子の紋「丁子(ちょうじ)」は香辛料や生薬として使われているそうですが、私はその実物を見たことがないので、どうしても具体的なイメージが浮かびません。英語の「クローブ」に置き換えてみても、…同様です。
 この丁子が家(神)紋に使われています。多くのバリエーションがありますが、ここに挙げたのは「違い丁子」です。

 かつては木曽郡楢川村で、今は塩尻市となった贄川に鎮座する麻衣廼神社(あさぎぬのじんじゃ)は、「建御名方命・事代主命・保食命」の三柱を祀っています。

楢川村教育委員会『楢川村文化財散歩』

麻衣廼神社本殿

麻衣廼神社本殿
麻衣廼神社「三間社流造の本殿」

 氏子総代の許可を得てから拝殿に上がり、いつもの習いで、(中央は建御名方命として)両脇の相殿に何か特徴ある造作がないかと蟇股を見上げました。ところが、右の相殿に予期しない「違い丁子」を見て、「これはどういうことだ」と違和感を持ちました。何れの祭神にも結びつかないからです。

麻衣廼神社の神紋

麻衣廼神社相殿の神紋「違い丁子」 自宅でその写真を見ると、確かに「交差した丁子」ですが、見馴れたものと違っています。
 手前の丁子が“すねている”ようにも見えますから、紋の名称によくある「変わり」が付いた「変わり違い丁子」でしょうか。しかし、ネットや図書館で調べても、同じものを見つけることができません。
 改めて麻衣廼神社の本殿について調べると、『楢川村文化財散歩』では「棟札から延享四年(1747)の建築とわかる」とあります。そのため、少なくとも270年前から「丁子紋」を掲げていることになります。

麻衣廼神社「立穀の葉」 一方の左側の相殿は、「立穀(たちかじ)の葉」とは趣(おもむき)が違いますが、(ここは諏訪神社ですから)梶の葉としました。因みに、下の丸い飾り金具には、本殿の写真に見える定紋幕と同じ「諏訪梶」が確認できます。これは、諏訪大社上社の神紋と同じです。
 残る中央の社殿ですが、主神の建御名方命として、あえて確認することはしませんでした。今となっては「しまった」と後悔するばかりですが、それでも、撮った中に一部でも写っているものがないかと探してみました。

麻衣廼神社本殿の蟇股 社殿の左側を撮ったものに、ギリギリですがその全容が写っていました。
 メインとなる祭神の“住居”とあって透かし彫りの蟇股です。しかし、祭神との関連性を窺わせるものではなく、汎用の(よく使われる)意匠「菊の花と葉」でした。

 祭神の三柱から諏訪系の神々を“引き算”すると、「違い丁子の神紋は保食神」となります。しかし、同じ神とされる宇迦之御魂神・豊受大神・大宜津比売神などを当てはめても、この組み合わせは見たことも聞いたこともありません。
 最後の“手段”として、公称の「保食神」は(おそらく明治期の神社明細帳に登録する際に書き替えられた)後付けの神ではないかと考えてみました。そうなると稲荷神の呪縛から開放されるので、自由な発想ができます。取りあえず、現在の麻衣廼神社の本殿を造営した1740年代に、贄川村限定の神、すなわち贄川の人々が神とも慕う偉人を祀ったものとしました。その家紋が「違い丁子」で…、といつものパターンですが、ここで行き詰まってしまいました。
 結局、麻衣廼神社本殿の写真を撮る目的は果たしたものの、相殿の蟇股を見たばかりに「諏訪神社に、なぜ丁子紋が」という謎を抱え込む羽目になりました。