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平沢諏訪神社 塩尻市木曽平沢 19.8.12

 漆器で有名な「平沢」は塩尻市木曽平沢ですが、木曽育ちである私の心内では、まだ合併前の木曽郡楢川村平沢のままです。その平沢にある諏訪神社に「御柱」があるとことを知ったので、さっそく見に出かけました。

塩尻市木曽平沢 漆器問屋や工房が続く風情ある家並みに代わって緑が巾を利かせると、その大きさからかつての役場と思われる建物が現れました。諏訪神社は役場の近くにあるので、これ幸いとその駐車場に乗り入れました。
 目の前はJA(旧農協)ですが、自治体の合併に伴ってJAも合併したはずですから「平沢支所」ということでしょう。その左が図書館で、さらに旧役場と続きます。右の「木曽漆器館」は「道の駅」に移転して、今は只のコンクリートの箱となっていました。関係ない、とも言われそうな状況説明を並べたのは、かつての楢川村の中枢部を目の当たりにして、平成の大合併が確実に“あった”という、ため息にも似た感慨に包まれたからです。

平沢諏訪神社

 緑が密生している高台の中に通じている道があります。その先を透かすと注連縄らしきものが見えます。鳥居はありませんが、諏訪神社に間違いないと確信してその坂を上り詰めました。広い境内でしたから、そこに飛び出したという感覚がありました。

塩尻市木曽平沢諏訪神社「拝殿」 舞屋や定紋幕の神紋が二つあるのが気になります。持参した楢川村教育委員会『楢川村文化財散歩』を開くと、右が建御名方命(たけみなかたのみこと)・左が香具突知命(かぐつちのみこと)(境内の案内碑では軻遇突智命)を祀ってある、と教えてくれました。
 覆屋を兼ねている拝殿は、柱や壁が赤と黒に塗られています。雨の当たる外壁まで漆塗りとは「豪気な」と思いましたが、石垣に垂れ落ちているのを見て、これは樹脂塗料の「カシュー」と思い当たりました。名の知れた漆の里でもそこまでは無理でしょう。

木曽平沢諏訪神社「本殿」 すでに「棟札によって享保十七年(1732)に建築された総漆塗りの本殿」と知識がありましたから、麻衣廼神社と違い「赤い本殿」に驚くことはありませんでした。二つの扉と幣帛を見て、改めて二神合祀を“復習”しました。
 その左右に木造の神像と狛犬が置かれていますが、扉の前中央にある御鏡は、何と“鏡台”です。(自宅で拡大した)写真からその細部を観察すると、引き出し(状のもの)がありますから当に鏡台です。一般的に見られる御鏡と同じものと思いますが、何か謂(い)われがあるのでしょうか。

木曽平沢諏訪神社 拝殿(覆屋)の後部が透かし塀なので、本殿が「柿葺流造」とよく分かります。
 覆屋の屋根裏が金網で囲われているのに気が付きました。それが途切れた部分に穴があるのは、小動物が越冬地として拝借しているのでしょう。舞屋の梁や柱もかじられた穴があります。幾重も補修の板が貼られていますがイタチごっこのようです。

御柱

平沢諏訪神社「御柱」

 境内が広いので、頭上がぽっかりと空いて開放感があります。その両端に、御柱が二本ずつ向かい合っていました。しかし、諏訪の御柱は本殿を囲むように建っていますから、それを見馴れた私にはやはり違和感がありました。
 ここの御柱には、贄川(にえかわ)の麻衣廼(あさぎぬの)神社と違い根元に穴があります。その余りの「四角さ」が気になったので『楢川村文化財散歩』の写真ページを見ると、やはりメドテコを付けた穴でした。贄川と平沢は旧隣村の関係にあるので、意識して差別化を図ったのかもしれません。

巣山家の奥津城

巣山家の墓所 右手の林の中に石祠が見え隠れしています。その多さと区画割りしたような配置にただならぬ「気」を感じました。一旦車道に下りてやや下ると、人目につくのを避けているかのような小道を見つけました。その突き当たりには境内から見えた石祠が整然と並んでおり、「大人命」「刀自命」「代々の神霊」と読めます。平沢諏訪神社歴代の宮司・(おくつき)と知りました。

平沢諏訪神社の御柱

 『楢川村文化財散歩』には、「木曽郡下では平沢諏訪神社と贄川麻衣廼神社でのみ御柱祭がおこなわれている。この平沢諏訪神社の御柱祭が木曽谷における南限地となる」とあります。

木曽平沢諏訪神社
「諏訪阪・諏訪社」(部分)

 臨川書店刊の復刻版ですが、秋里籬島(りとう)著『木曽路名所図会』に諏訪神社の「絵」を見つけました。文化二年(1805)当時も、現在と同じ神楽殿の前に同じ配置の御柱があるのを見て妙に感心してしまいました。
 鳥居の前が「諏訪阪(坂)」で、ここを頂部として上り下りする人が描かれています。

御柱の冠

 諏訪教育会『復刻諏訪史料叢書』に収められた『諏訪郡諸村並旧蹟年代記』に平澤諏訪神社の記載がありました。

一、木曽谷平澤村諏訪社御柱諏訪本社と同日立但八角冠なし

御柱の頂部 冠(かんむり)は御柱の頂部のことです。諏訪大社では三角錐に切り落としますが、写真でわかるように、平沢では「輪切りのまま」ということになります。しかし、「八角」が理解できません。下からは見えませんが、八角に面取りをしてあるのかもしれません。