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境の宮の薙鎌 北安曇郡小谷村 15.10.25

 御柱祭の前年に当たる今年の9月1日に、県境の小谷(おたり)村「境の宮」で「薙鎌打神事」が行われました。10月も末に近づくと、紅葉との絡みもあり、一気に「新潟県が見える境の宮」へ行く気運が高まりました。

戸土へ

 一応簡易舗装されていますが一車線幅の道です。その先が木々の中に消えているのを見て恐れをなしました。「ここから歩くのもやむを得ないか」と思案していると、何とそこから乗用車が現れ私の車に横付けの状態で駐まりました。脇に無人のイワナ養殖場があるで不審車と思ったのでしょうか。疑いをもたれては、と機先を制して「境の宮への道」を尋ねました。その答えが「蛇の涙」まで発展したのは、彼が境の宮を管理する戸土(とど)の氏子総代だったからでした。

 「テレビで今年の薙鎌打ち神事を見た」と合わせると、「神事の間だけ晴れた(映像では雨が止んだ)。木に蛇の形が写った心霊写真が撮れた。薙鎌神事は6年毎に境の宮と小倉明神で交互に行うので、12年に一度では式次第や段取りを忘れてしまう。そのため写真やビデオで記録した」と話し、「妻(の蛇)を村人に焼き殺されて悲しんだ蛇が流した涙が白池や鎌池になった。その後蛇は野尻湖に移り棲むようになったが、村人は引きずり込まれると恐れ今でも野尻湖には近づかない」という民話「蛇の涙」まで披露してくれました。

ブナ森の彷徨(ほうこう)

 バスも通るから大丈夫との話に、覚悟を決めて乗り入れました。しばらくして現れたチェーンのゲートに、車はここまでと広場の隅を駐車場としました。「境の宮の看板がある」との話ですから、ゲートのチェーンをまたいでさらに奥へ続く車道を辿りました。しかし、その先は山道に変わり、沢から先は獣道さえもありません。結局、何が原因なのかわからぬまま引き返しました。その時のブナ森の彷徨で撮影したのが下の写真です。糸魚川市の先に日本海も遠望できました。

糸魚川市を望む

 結果としてこの彷徨が“怪我の功名”となり、予定にも知識にもなかった「薙鎌神事旧跡・白池」に繋がりました。その顛末は最下段の「リンク」でご覧できます。

境の宮

 「白池」から戻り、駐車したゲート前の広場から改めて周囲を観察しました。しかし、ここが戸土と言っても、見える範囲では家数が片手にも満たない廃集落です。訊く人もいません。試しに20メートルほど下ると、…総代が言うところの「境ノ宮入口」の標識がありました。ここで、「塩の道」の道標に「戸土←」と書いてあるのを、越えてはならないゲートの先に戸土があると理解したのが原因とわかりました。他力本願ながら“禍が福と転じた”ので、過失はどちらにあるかと責める議論はしないことにしました。

境の宮 境の宮への道が確定できたので、急ぐことはないと広い坂道をのんびり上りました。参道とあって草刈機で手入れをしたのでしょう、雑草ですが芝生状に生えそろっているので踏みしめるが惜しいくらいでした。突き当たりの尾根の突端に、御堂のような境ノ宮が見えました。木々を透かした先は空ですから、日本海が眺められることを予感しました。

薙鎌が打ち込まれた境の宮の神木 早速薙鎌です。境内右端に立つ神木の幹には、合わせて6体が打ち込まれていました。下部の古いものは頭部が樹皮から覗いている状態なので、神木に飲み込まれているように見えました。木にとっては甚(はなは)だ迷惑な存在と思われますが、神木と崇められては我慢するしかないでしょう。
 注連縄下の右側が、二ヶ月前に打ち込まれた薙鎌です。すでに赤錆が出ていました。写真ではよく見えませんが、その左が12年前の薙鎌で背中の四分の一が埋もれていました。

境の宮の薙鎌
「日本海」望遠レンズなので実景とは異なります

 諏訪大社の威光を「越の国」に掲げ、これより内の鎮護は信濃国一之宮諏訪大社に任せろ、としたのでしょうか。ブナ林の果てに糸魚川の市街と日本海が見渡せる地に立って、諏訪大社を意識する不思議な場所でした。
 かつて「塩の道」で往来が多かったとはいえ、諏訪神社の神官がここまで参向することは多難だったに違いありません。6年に一回でそれが神職の“仕事”ととしても、頭痛の種だったと(私は)想像してしまいました。

境の宮から越後遠望 「大宮諏訪神社」のサイトには、「薙鎌打神事は明治11年に途絶え、昭和18年に復活した」とあります。“埋没具合”から、左が復活初年の薙鎌でしょう。
 今日は、迷ったために「薙鎌打旧蹟・白池」へも行くことができました。これも御縁と、ブナの森に感謝して帰途につきました。

 北安曇郡小谷村の戸土は、車利用では今でも新潟県側から入ります。一度は、他県の土を踏まずに大宮諏訪神社から歩いてみたいのですが、まだ実現していません。


‖サイト内リンク‖ 薙鎌打ち神事旧跡「白池」