諏訪大社と諏訪神社トップ / 上社雑学メニュー /

「贄掛の大欅」諏訪大社上社本宮

 「モズのハヤニエ」って知っていますか。『goo』の国語辞典では、「モズが昆虫や小動物を捕食し、とった獲物を小枝などに突き刺しておく習性がある。枝に突き刺しておく虫など他の鳥の餌になるのを、供物と見立てた語(抜粋)」とあります。
 そのハヤニエを単にカタカナの語彙(ごい)として今の年まで来ましたが、最近「ニエ」は生け贄の「贄」ではないかと思い当たりました。調べると当(まさ)に贄でした。そうなると「ハヤニエ」は「早贄」か、と念のために確認すると「速贄」でした。

贄掛の大欅 ここで「贄掛の大欅」が登場します。この諏訪市の天然記念物であるケヤキは、二之御柱の右脇の位置(左写真)がベストです。裏から眺めると、片側の大枝が大きく傾き大樹の風格はまったくありません。そんな木姿より気になるのが「贄掛の大欅」の文字です。

 「贄」は、「生贄」などから血生臭いイメージを連想し拒絶反応を起こしてしまいます。しかし、現在でも、誰もがそれと気が付かずに贄を供えていることを知っているでしょうか。
 身近な例では上棟(棟上げ)式があります。私も棟梁から「鯉(コイ)」を用意するように言われました。これは、言うまでもなく上棟式に出すご馳走ではありません。「建物が完成するまで、災いが起こらないように」という神への供えものです。「魚」と「鳥獣」の違いだけ、と言うとグッと身近に感じられるようになったでしょうか。

 現在は「贄掛の大欅」の案内板はありません。下写真は、平成15年5月17日に撮ったものです。

贄掛の大欅

 藤森栄一著『諏訪大社』では、「古諏訪神社上社は三壇で構成されていた」とあり、下壇の説明で「神楽殿のある下段、すなわち第一段が氏子達の祭りの場で、贄掛け棚があり、いろいろな獣が掛けられていた」と解説しています。

下の壇は松柏城(しょうせんはくせい)(いらか)を並べ拝殿廻廊軒をつらねたり、垂迹(すいじゃく)の化儀を専らにして魚肉の神膳を此の所に供す
『諏方大明神画詞』(12)

 これで「贄掛」の由来がすっきりしました。このケヤキの辺りから神楽殿にかけて贄が多く掛けられていたのでしょう。
 諏訪大社の前身・諏訪神社上社に関する文献を見ると、贄を「捧げる・供える」ではなく「掛ける」と書かれています。小物は「御贄篭」や「御贄棚」に置くとして、鹿肉は必ず「御贄柱」の串に刺して高く掲げたのでしょうか。これから、「贄を掛ける」という言い方が一般的になったような気がします。