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本宮神楽殿の大太鼓 17.1.1

 「牛の一枚革では日本一」とある神楽殿の太鼓。現在ではその座を明け渡したものの、新参者には「○○年早いよ」と言い切る歴史があります。その「歴史」も、屋根があるとはいえ吹きさらしの中で幾多の暑さ凍みに耐え続け彩色もすっかり色あせた姿、と言い換えることができます。そのため、その(薄汚れたとは書けないので)古びた太鼓は参拝者に注視されることはないようです。
 かねてから、新年にだけ鳴らされるというその音を聞きたいと思っていました。昨年は、巫女さんから「元旦の朝6時」と聞き、その瞬間を寒さに耐えながら待ち続けました。空振りに終わってみて、尋ねたときに即答できなかった彼女は「年末年始だけ巫女さん」とわかりました。

 平成16年の大晦日、まだ「生録」というジャンルがあった頃に購入した、当時2万円以上した「エレクトレットコンデンサーマイクロホン」を外部マイクとしたビデオカメラを持って出かけました。カメラの録音レベルは初期設定では自動になっています。御柱祭でもそうでしたが、太鼓などの瞬間的に大きい音は、歪まないようにその調整機能が効くため、再生時には画像と音がずれるように聞こえます。そこで、マイクレベルを(取りあえず)-6dBにマニュアル設定しました。

オーブの乱舞(ウソ) 3分前に着き、アセりながら神楽殿横の土俵の雪上に三脚をセットしました。せっかく外部マイクを持ち込んだものの、カメラに取り付ける余裕がありません。結局内蔵マイクと決めファインダーをのぞきますが、暗すぎて構図が分かりません。適当に狙いをつけ撮影を開始しました。
 それとは別に、デジカメで撮ったのが左上の写真です。さすが古さを誇る諏訪大社、「オーブの乱舞をバッチリ撮影できた」ということは全くなく、フラッシュの光に反射したただの雪粒でした。

 照明の下、神職が厳かに打ち鳴らすものと思っていましたが、太鼓を叩き始めたのは、時間前から“たむろ”していた職員と思われる人でした。がっかりしましたが、打ち手は違っても神楽殿の太鼓の音には違いありません。音は予想していた通りのボコボコ音でした。皮の張りが緩み誠に情けない音です。二年参りの行列をよそに、このシーンを見守るのは、当事者を除くと自分を含めた二人だけでした。参観者がいないわけが初めて分かりました。

神楽殿「大太鼓」の引退 21.11.8

 「牛の一枚革では日本一」のタイトルは、諏訪大社本宮神楽殿の太鼓が保持していました。通常ならこの“記録”は破られないはずですが、大太鼓を作るために「牛を肥大化させる」という“禁じ手”に出て、今や次々と大太鼓が作られています。“大牛は死して皮を残す”時代でしょうか。
 すでに「タイトル」を返上して久しいのですが、ここで、「日本一を奪還」は別として、新しい太鼓が作られることになりました。今、「諏訪大社奉献大太鼓実行委員会」が旗を振って、平成22年4月奉献を目指して制作を始めています。ネットで「協賛者」を募集しているので「一口乗ろう」としましたが、私には三口同然の「一口1万円」を読んで、…タブを閉じました。

諏訪大社神楽殿の大太鼓

 この太鼓は「神楽殿建立時に奉納された」とあります。「活字としての裏」を取ろうと図書館に出掛けました。しかし、中洲公民館刊行『中洲村史』の中に、「文政10年10月8日に神楽殿の棟上があった」「このときに太鼓の皮が張り替えられた」とあるだけでした。これによると、太鼓の胴だけは文政以前の歴史があることになります。
 『中洲村史』では「直径1.8m・長さ2.15m」とある大太鼓ですが、神楽殿内が暗いので「竜」が「大ウナギ」に見えてしまいます。4月まではまだ間がありますが、この先「何が起こる」かわかりません。写真に撮って、「確かに竜が描かれている」と紹介することにしました。

神楽殿の太鼓右 自然光にこだわってフラッシュ無しで撮りました。左は、神楽殿の正面から見て右側面です。この写真ではよく見えませんが、上写真のように竜の輪郭がハッキリ残っていることがわかりました。
 下地から現れている横のスジから、太鼓の胴は「桶と同じ造り」とわかります。中央の縦スジは、材質はわかりませんが金属製のタガでしょう。それが中心からズレているのが不思議でしたが、下に付いている「環」に気がついて納得しました。皮にシワが寄っているのが見えますから、音が「ボコ、ボコ」だったのも無理はありません。

神楽殿の太鼓右 反対側の左側面ですが、上部にホコリが被っているのでよく見えません。尾が描かれていることから、反対側に向かって太鼓に巻き付いている絵と見ました。しかし、三本爪の手と髭が確認できたので、左右に一匹ずつ描かれていることがわかりました。「昇竜・降竜」の構図でしょう。竜の“単位”が「匹」では弱いかな、と辞書を引くと、「竜の数え方」は「匹・頭」とありました。
 この太鼓が打ち鳴らされるのは、平成21年元旦の0時で最後になります。音質はともかく、文政の音を自分で鳴らしたいのですが…。

新旧「神楽殿大太鼓」 22.4.25

新神楽殿の太鼓 北参道に、奉納する太鼓を載せたトラックが見えました。同時間に諏訪市博物館で「御柱シンポジウム」があるので眺めるだけにしました。その帰りに撮ったのが左の写真です。
 翌日の新聞には「諏訪大社に大太鼓奉納」とありました。記事の始めの部分ですが「神鼓流諏訪神太鼓の柳沢忠範宗家(72)=下諏訪町西赤砂=が諏訪大社御柱祭に合わせて制作していた大太鼓が完成し、25日に上社本宮の神楽殿に奉納された」とありました。さらに「皮面直径2.1m・胴長さ2.5m・胴太さ2.7m・重さ1トン」で、制作費は、何と、位取りしてしまった約4500万円とありました。

 新聞には「完成し」とありますが、私には「絵」が未完成(失敗作)としか見えません。納期に間に合わなかったのは歴然で、これから現場で描き上げるのでしょう。しかし、太鼓は新調したものの、神楽殿で神楽が舞われることはありません。4500万円の隠し値札をつけた“ただの置物”とは、言い過ぎでしょうか。