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本宮神楽殿の大太鼓

 「牛の一枚革では日本一」とある神楽殿の太鼓。現在ではその座を明け渡したものの、新参太鼓には「○○年早いよ」と言い切る歴史があります。その「歴史」も、屋根があるとはいえ吹きさらしの中で幾多の暑さと凍みに耐え続け彩色もすっかり色あせた姿、と言い換えることができます。

神楽殿の太鼓右 その(薄汚れたとは書けないので)古びた太鼓は参拝者に注視されることはないようですが、私は、かねてより、新年にだけ鳴らされるというその音を聞きたいと思っていました。
 そこで、巫女さんから「元旦の朝6時」と聞き出したのですが、寒さに耐えながら待ち続けたのが空振りに終わったことから、尋ねたときに即答できなかった彼女は「年末年始だけ巫女さん」と理解できました。

 平成16年の大晦日、まだ「生録」というジャンルがあった頃に購入した、当時2万円以上した「エレクトレットコンデンサーマイクロホン」を外部マイクとしたビデオカメラを持って出かけました。
 カメラの録音レベルは初期設定では自動になっています。御柱祭でもそうでしたが、太鼓などの瞬間的に大きい音は、歪まないように調整機能が働くため、再生時には画像と音がずれるように聞こえます。そこで、マイクレベルを(取りあえず)−6dBにマニュアル設定しました。

オーブの乱舞(ウソ) 3分前に着き、アセりながら神楽殿横の土俵の雪上に三脚をセットしました。
 しかし、せっかく外部マイクを持ち込んだものの、カメラに取り付ける余裕がありません。結局は内蔵マイクと決めてファインダーをのぞきますが、暗すぎて構図が分かりません。適当に狙いをつけて撮影を開始しました。
 それとは別に、デジカメで撮ったのが上の写真です。さすが古さを誇る諏訪大社、「オーブの乱舞をバッチリ撮影できた」ということは全くなく、フラッシュの光に反射したただの雪粒でした。

 明るい照明の下、神職が厳かに打ち鳴らすものと思っていましたが、太鼓を叩き始めたのは、時間前から“たむろ”していた職員と思われる人でした。がっかりしましたが、打ち手は違っても神楽殿の太鼓の音には違いありません。
 その音は、予想していた通りのボコボコ音でした。皮の張りが緩み誠に情けない音です。二年参りの行列をよそに、このシーンを見守るのは、当事者を除くと自分を含めた二人だけです。参観者がいないわけが初めて分かりました。

大太鼓の引退 21.11.8

 「牛の一枚革では日本一」のタイトルは、諏訪大社本宮神楽殿の太鼓が保持していました。通常ならこの“記録”は破られないはずですが、より大きな皮革を得るために「牛を肥大化させる」という“禁じ手”に出たところがあって、今や次々と超大太鼓が作られています。
 そんな世の流れから「タイトル」を返上して久しいのですが、ここに来て、「日本一を奪還」は別として、「諏訪大社奉献大太鼓実行委員会」が旗を振って、平成22年4月奉献を目指して制作を始めました。ネットで「協賛者」を募集しているので「一口乗ろう」としましたが、私には三口に等しい「一口1万円」を読んで、…タブを閉じました。

大太鼓の由緒

 神楽殿の案内板には、この太鼓は「神楽殿建立時に奉納された」とだけあります。より詳細な情報を求めて図書館に出掛けると、中洲公民館刊『中洲村史』に「文政10年10月8日に神楽殿の棟上があった。このときに太鼓の皮が張り替えられた」とあるだけでした。太鼓の胴だけは文政以前の歴史があることになりましたが…。
 同書では「直径1.8m・長さ2.15m」とある大太鼓ですが、光が乏しい神楽殿内では、「竜」が「大ウナギ」に見えます。この先「何が起こる」かわからないので、写真に撮って「確かに竜が描かれている」ことを紹介することにしました。

神楽殿の太鼓右 左は、神楽殿を正面から見て右側面です。自然光にこだわって、フラッシュを使わずに撮りました。
 胴の下地に見える横のスジから、「桶と同じ造り」とわかります。また、幅広の縦スジは金属製のタガと見ましたが、どうでしょうか。ただ、中心からズレているのが不思議です。

諏訪大社神楽殿の大太鼓

 竜の頭部を拡大すると、輪郭線がハッキリ残っていました。

神楽殿の太鼓右 反対側の左側面ですが、上部にホコリが被っているのでよくわかりません。尾が描かれていることから、反対側に向かって太鼓に巻き付いていると見ました。
 ところが、三本爪の手と髭が確認できたので、竜が左右に一匹ずつ描かれていることが判明し、「昇竜・降竜」の意匠と確認できました。ここで、竜の“単位”が「匹」では弱いかなと辞書を引くと、「竜の数え方は、匹・頭」とあり、「匹」でも間違いではないと知識を増やしました。
 また、皮にはシワが寄っているのがわかり、「ボコ、ボコ」音だったのも無理はないと理解しました。この太鼓が打ち鳴らされるのは、平成21年元旦の0時で最後になります。音質はともかく、文政の音を自分の手でで鳴らしてみたいのですが…。

新大太鼓が完成 22.4.25

新神楽殿の太鼓 北参道に、奉納する太鼓を載せたトラックが見えます。同時間に諏訪市博物館で「御柱シンポジウム」があるので、今は眺めるだけにしました。
 その帰りに撮ったのがこの写真です。
 翌日の新聞には、「諏訪大社に大太鼓奉納」との見出しが躍っていました。記事の始めの部分ですが「神鼓流諏訪神太鼓の柳沢忠範宗家(72)=下諏訪町西赤砂=が諏訪大社御柱祭に合わせて制作していた大太鼓が完成し、25日に上社本宮の神楽殿に奉納された」とあります。さらに「皮面直径2.1m・胴長さ2.5m・胴太さ2.7m・重さ1トン」で、制作費は、確認のために位取りしてしまった約4500万円でした。

 新聞には「完成し」とありますが、私には「絵」が未完成としか見えません。納期に間に合わなかったのは歴然で、これから現場で描き上げるのでしょう。それはともかく、太鼓は新調したものの、神楽殿で神楽が舞われることはありません。「4500万円」の隠し値札をつけた置物となっているとは、少し言い過ぎでしょうか。

 現在もこの絵柄のままなので、これが完成品ということになりました(私には「絵は失敗作」としか見えませんが)