平成15年3月2日。地元ケーブルテレビ「LCV」に切り替えると、御神渡りの状況を諏訪大社に報告する「注進式」が流れていました。
その映像を文字に替えると、「正装した八劔神社(八剣神社)総代の面々が見守る中、大総代が三方に載せた『御渡注進状』二通を捧持しながら幣拝殿に昇殿。その三方は神職の手を経て幣殿中央の案に供えられた」となりました。
3時間後の再放送を録画してみました。ストップモーションで確認すると、「御渡注進之事」とある注進状には「5筋の御渡の道筋・平成15年1月6日全面結氷・1月15日御渡・1月19日の拝観には氷厚13センチ・気温零下8度」などと書かれ、末尾には八劔神社総代と八劔神社宮司の連署がありました。
この注進状は、その昔は大祝の名で京都の奉行所に提出したそうです。現在はその旧慣に従って、諏訪大社が宮内庁と気象庁に上申しています。
今年は早々に全面結氷したので、三年連続の御神渡りを確信しました。しかし、その後に降った雪が諏訪湖を覆い、なかなか融けません。徐々に、御神渡りの成立を危惧する声が出始めました。雪が断熱材となるために寒気が直接氷に届かず、御神渡りの“素”となる膨張伸縮を阻害するのだそうです。その後は、大幅な冷え込みはありませんでした。
1月下旬に、筒粥占いの結果を書いた「筒粥目録」を手に入れるために上諏訪側を通ると、何と、氷が全く見えません。西側はまだ“希望が観測”できる状態でしたが、これで絶望が観測でき、御神渡りがない「明けの海」が確定しました。
「27日の日曜日に注進式がある」と新聞に載っていました。何時だろうと調べると、この日は前宮の月次祭があります。これで午前中の可能性が消えました。地元紙を検索すると「午後1時から八劔神社で奉告式。3時から本宮で注進式」と余裕の時間です。因みに、御神渡りが成立しない明けの海であっても、注進式は行われます。
上社本宮は西に連なる山裾に造営されていますから、今の時期では必須である太陽の恵みは全くありません。
寒気で凛と引き締まった幣拝殿ですが凡人には寒々としか映らない舞台で、八劔神社の宮坂宮司が右片拝殿・次いで諏訪大社の神職が左片拝殿・八劔神社総代会が右片拝殿の順に着座しました。八劔神社宮司が総代会の末席にいることから、注進式の主役が八劔神社の総代会であることがわかります。
たまたま訪れている参拝者からは「結婚式?」の声が何度も聞かれます。むさ苦しい(かどうかは判断する人によりますが)中高年の男性のみ、という姿を見れば、何かの神事に違いないと思いつくはずですが…。
諏訪大社宮司(左端)が見守る中、八劔神社大総代が昇壇して神職に注進状を渡します。
幣殿中央の案に置かれた注進状の前で、八劔神社宮司と総代代表二名が玉串奉奠を行って式が終わりました。待つ時間の方が長かった、という実質15分の神事でした。
2月も終わろうかという今日ですが、薄手の手袋をつけてもカメラを持つ指先が冷たく感じました。駐車場で確認した車の温度計は、2度を表示していました。
御神渡りが5年ぶりに認定された年は。午後2時が注進式でした。
私にとっては、御神渡りが成立しての注進式は初めてでしたが、見学者が新聞記者三名を含めても数名という寒い式でした。
献饌がないので、当然ながら撤餞もありません。このことを今日気が付いたのですが、名称通り、あくまで「式」ということなのでしょう。