神長官守矢史料館の館長に「御頭御社宮司総社の大梶」について尋ねると、「その梶は枯れてしまった。梶には雄・雌がある。御頭御社宮司総社の裏に雄梶と雌梶が植えてある。上社本宮や前宮の梶もここから移植した。下社には大きな木がある」などの話がありました。
もう芽を出すことはない乾いた幹を見ると、何カ所も穴が空き、そこからキノコが生えていました。カミキリムシの食害の跡でしょうか。「梶は暖地性の木だが、ここで育ち難いのは寒さより虫害が大きな原因」との話が納得できました。
案内板にある「目通り幹径1.7m樹齢およそ100年」の梶は平成二年に枯れ、現在は消滅していました。「目通り幹径1.1m樹齢およそ40年梶」も、5月半ばというのに冬姿のままです。かつての日陰を作っていた姿を想像しようとしましたが、樹皮がはがれた木肌を目にしては無理でした。
帰宅してから調べると、桑科を好む害虫は蝿から始まり蛾(幼虫)や甲虫と範囲が広く、葉どころか幹まで食い荒らすと言いますから始末に負えません。100年も生きたというのは、まさに奇蹟に近いのではないのでしょうか。
平成15年7月12日現在の、梶と言われた枯れ木です。1年前(上写真)はまだ小枝が残っていましたが…。
現在、市指定天然記念物「神長官邸のみさく神境内社叢」の「カジノキ二本」は、案内板の中にのみ存在しています。そのDNAを引き継いだ若木が、御社宮司総社の境内ですくすくと育っています。
平成21年9月に訪れた時は、(上写真の梶は)すでに切り株になっていました。
この日、神長官邸の管理者から、御社宮司総社の裏にある瑞垣(みずがき)の中に「神木の梶の木」があったことを教えられました。前出の「樹齢百年・目通り幹周1.7m」の梶のことでした。
神木はなくなっても、垣を撤去するのは偲びがたかったのでしょうか。傾いたままの、これも朽ち始めた木枠だけが残っていました。