宮地直一著『諏訪史 第二巻 前編』から、「七石に就いては古人の説が一様でなく何れが正しいとも遽(にわ)かに決定し難いので、その大体を次に表記し、之が現在の擬当地を記入して行く」とある「諏訪七石の一覧表」を転載しました。
諸説→ 名称↓ |
諏訪上社物忌令 (神長本) |
信濃奇勝録 | 画入七石の事 | 信濃国一宮諏訪大明神御由来記 | 現在ノ擬当地(該当地?) |
御座石 | 正面の内 | ヤガサキ | 矢ヶ崎村内 | 神 前 | 上社境内ノモノ今見エズ、矢ヶ崎村トスルハ御座石社ノ御座石ヲ指ス |
沓 石 | 社 内 | 社 中 | 社 内 | 護摩堂ノ下 | 上社布橋ヲ渡詰メ突当リテ更ニ曲ル所右側下ノ大石 |
硯 石 | ─── | 守ヤ山道 | 社 内 | 神前上 | 上社両宝殿ノ間、四足門ヲ通シテ向フニ見ユル石垣上ノ大石 |
蛙 石 | 社内(但シ甲石トアリ) | 社 中 | 社 内 | 鉄塔ノ下 | 上社境内蓮池中 |
小袋石 | 磯 並 | 杖突峠下 | 磯並内 | 高遠道磯並 | 宮川村高部ノ内、杖突峠ニ登ル途中右方、道ヨリ少シ山ニ入リタル所 |
兒玉石 | 海 端 | ユノ脇 又磯並 |
─── | 湯ノ脇 | 上諏訪町湯ノ脇兒玉石神社境内 |
亀 石 | 千野川 | 宮川内 | 茅野村内 | チ ノ | 宮川ガ西茅野ヲ流通リ、安国寺ト中河原トノ境ニ来ル辺ニアリシトイウ |
『諏訪史 第二巻 前編』は昭和6年の刊行とやや古いのですが、他の巻を含め諏訪を代表する歴史書です。
『諏訪上社物忌令』 嘉禎4年(1238年)の奥書がある『上社本 諏訪上社物忌令』には、〔七石之事〕として「御座石・御沓石・硯石・蛙石・小袋石・小玉石・亀石」を挙げています。
文明年間(1469-1486)に書かれた『神長本 諏訪上社物忌令之事』では、「蛙石を甲石」とする以外は同じですが、こちらには所在地を並記しています。硯石だけは書いてありませんが、「言わずもがな」ということでしょう。これが、上表の左端に当たります。
『信濃奇勝録』 佐久の神官井出道貞が幕末にまとめた書です。〔諏方上下神社〕に[七石]として挙げています。
『画入七石の事』『信濃国一宮諏訪大明神御由来記』 この二書については未見なので、“表の通り”となります。
他にも「七石」を書いたものがありますが、これを基本資料としました。