■ 注進奉告祭は、御神渡りの成立・不成立によって神事の時間や日程が異なります。
八劔神社の拝殿前には、すでに報道陣が“多たむろ”していました。寒さ対策ということでは共通していますが、それぞれが異なった服装をしています。余りの風の冷たさに、私も、ザックに丸め込んでいたマウンテンパーカーを広げてしまいました。一方、参列する関係者は正装です。紋付き袴と礼服、さらに礼服に小忌衣(おみごろも)を羽織った三つのグループがありました。
開始時間が迫ると、一列になった参列者が手水で口と手を浄め始めました。全員が拝殿に着座したのを見計らって、何にでも興味を持ってしまう私は、その桶を覗いてみました。
諏訪では榊の代用として使われる冬青(そよご)の小枝が何本か沈んでいます。手水は神事前のいつもの光景ですが、「ただの汲み置き」ではないことを今知りました。
1時5分前に神事が始まりました。その内容は、「八劔神社宮坂宮司が、今年の諏訪の湖は全面結氷せず、小波打ち寄する明けの海につき、御渡りござなくそうろう、と報告した」とある翌朝の新聞記事としました。
拝殿での神事が終了すると、御神渡り拝観式で肩に掛けられるはずだった注連縄の「御焚上」が行われます。
始めに、宮坂宮司から「皆さんが心を込めて作った注連縄ですが…」とねぎらいの言葉が掛けられました。関係者には残念な結果となりましたが、私は、これはこれで御焚上の写真が撮れたと満足しました。
私もうなずく「ライターよりマッチの方が」との声が挙がる中で、今はワラの山になった注連縄に火が着けられました。ゴミ焼却兼用と思われる錆びたドラム缶が情けないのですが、火で浄められるということもありますから、よく見なかったことにしました。
全てが終わると、宮司は報道記者に囲まれました。過去の御神渡りの記録を元に、各社の質問に答えているようです。
直会の後は、諏訪大社上社に出向き、御神渡りの状況を報告する「注進式」が行われます。私は、寒さと昼飯抜きという理由でその神事の見学は遠慮しました。